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漆に魅せられ職人、作家に(京都新聞北部のまちへ きたものがたり より)

山内耕祐さん・高島麻奈美さん

【山内耕祐さん】

府内唯一の漆産地の福知山市夜久野町で、実に26年ぶりに漆掻き職人が誕生した。

同町千原の山内耕祐さん(29)は昨年12月中旬、漆の植栽地で若木を眺めた。生育して漆をかく「鎌入れ」ができるのは10年後。

夜久野の未来に思いををはせた。

京都市立銅駝美術工芸高から富山大のデザイン工芸コースに進んだ。

漆芸一筋の生活。だが、大学3年の就職活動を前に、将来を思い描けなくなった。

「漆にこだわってきた理由はなんだったのだろう」。自問自答する日々の中で、丹波漆について知った。

一滴一滴、大切に漆を採る漆掻き職人さん。これまで目を向けてこなかった採取の現場にくぎ付けになった。

 漆掻きのシーズンオフには、自宅2階の工房で漆器作りも手掛ける。

【高島麻奈美さん】

「漆を塗った後にきれいな艶を出すためには、下地から丁寧に作ることが大切」。

木と漆の館で展示販売する漆器作りも手掛ける。

「漆を器に塗っても、乾かしたら色合いが変わる。思った通りに完成しないのが漆芸の奥深さ」と笑顔を浮かべる。

 富山県上市町の実家で使っていた漆のわんの艶やかな光沢に引かれた。

京都市立芸術大や同市産業技術研究所で漆器製作を学び、15年に移り住んだ。

 年間で取れる丹波漆の量は3~5キロと、今は少ない。高島さんが制作で使えるのは年5回ほどだが、のびがよく透明なため漆芸に向くと確信している。「まだまだ修行中。いつか丹波漆のオリジナル作品で個展を開きたい」。器に向かうまなざしは真剣だ。

 

 

 

    (2017年1月9日京都新聞記事引用)